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2017年12月23日 (土)

杉本博司の江之浦測候所

皆さま

お元気にお過ごしですか?

バリは相変わらず雨降りばかりですが、

ありがたいことにアグン山噴火の方はずっと小康状態。

バリスタジオは先週末今年最後の服を送り出して

今週からは春の服に取り掛かりました。

師走ってバリにはあまりない感覚で、今どきが一番のんびりできる。

ついダラダラとしてしまいますが、

日本でのたび日記がもうちょっとありますので

追っかけ投稿いたします。

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写真家・現代美術家の杉本博司氏が私財を投じ

10年がかりでつくったという

「小田原文化財団・江之浦測候所」というところへ行きました。

長らくニューヨークを拠点に活躍され、六本木・森美術館や東京都写真美術館などの大掛かりな展覧会もあったので、杉浦氏の存在をご存知の方は多いかと思います。

私は直島アートプロジェクトの神社での作品を見て以来隠れファン。

それに、小田原といったら私の高校時代の庭(!)じゃありませんか。

江之浦測候所は穏やかな海原を見渡す広大な高台にありました。

ふつうにみかん山のままだとしても、

気持ちが救われるようなおだやかで温かな情景です。

杉浦氏もここに母なる海を感じていたそうです。

で、ここに何作ったの?? 測候所って何、何??
気になりすぎて、困るので。早速行ってみました。

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見学は完全事前予約制。

東京から京都へ移動の日にトランジット、なのです。

ネット予約、セブンイレブン発券、

自販機一個があるだけの無人駅から時間指定の送迎バス、

施設内は物販もカフェもなく、

見学する心構えがおのずと整います。

(ですから、ここをデートスポットに推している雑誌の記事はちょっと間違っているように思えます。)

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海原を見渡すとやおら自分も素材や風景の一部に溶け込み、無になります。

ちなみに幅広く収集されている「石」ですが、相当なこだわりを感じます。

(こちらは室町時代のものだったか?)

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根府川駅は無人駅でした。このバスに乗って行きます。

歩くと30~45分かかるそうです。

湘南ライナーで駅に降り立った人のほとんどが

このバスに乗ったような気がします。(笑)

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ぐいぐいと登って行く山、キラキラ輝く海にすっかり心奪われ、10分くらいで到着です。

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エントランス。
屋敷の門のような不思議な雰囲気。

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見学者はこの門をくぐらず、まずはメインの詰所で入場手続き。

詰所と言ってしまいましたが、待合棟です。縁取りのないガラス張り、地階への採光、無機質な素材に古い石。

江之浦測候所のものがたりを早速感じます。

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見学順路は自由。

待合棟の前にある「100mギャラリー」にまず目が行きます。

長さ100mの片面総ガラス張り。

こんなふうに海に向かって気持ちよく、まっすぐに伸びる。

この細長い空間を夏至の太陽がまっすぐに突き抜けるそうです。

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そのわきの階段を下りていきました。

何やら古い石塔や敷石。石だらけ。不思議~~。

後から調べて分かったのですが、杉本氏は一時骨董商だった時代があるそう。

おそらくその頃に集め始めたものなのでしょう。それにしても

石だけ見たらここは“石ミュージアム”ですね。

そういう印象があとに残らないのがまた不思議なんですけれども。

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「止め石」。ここから先に行かないでください、という敷地内のルール。

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その向こうにあった「茶室」には、自筆の書が。茶道にも長ける杉本氏。

すっと前に「たけしのアートビート」というNHK番組で、北野武が杉本氏のNYの事務所を訪問するのだけど、招かれるはその中にしつらえられた茶室でしたね。

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茶室に上がる手前には、直島の護王神社でも使われていた光学ガラス。

まるで氷のような涼しげなかたまり。

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茶室の海側の門になっているのは、

古墳時代の鳥居に倣い組み立てられたという石造鳥居。

春分、秋分の日の出の光が真っ直ぐに入るような位置に設置されているそうです。

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100mギャラリーは先端が突出していました!

人が立っているところはガラスのフェンスがあるけれど、一瞬そうとは分からず。

下をくぐるようにして、海を見晴らす舞台があるところへ。

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突出したところの下。

丸いのがゴロゴロ。

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これであの止め石をつくっているのでしょうか。

川の流れのように敷かれている丸石。

丸くなる過程について空想する、どれだけの時間がかかるのか。

きっととても長い時間。

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左の長いのは100mギャラリーの壁面です。

下のこの敷石は京都市電の軌道敷石だったものらしく。

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大きな一枚岩の真ん中の亀裂は自然に?

石が割れるって、これまたどのくらいの力がいるものだろう、と。

あぁ、何かちっぽけな私の前後左右に、悠久の時間みたいな感覚がぞわぞわと。

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光学ガラスでできた能舞台。清水寺のような懸け造り。

席からはガラスの舞台が水面に浮いているように見える、と、パンフレットにあるけれども。

その左わきの錆びた長いのが、私は一番心に残りました。

錆びた長いのの中は、シンプルなトンネル。

切り取られる海のまぶしさ。止め石。

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隧道。

このパースペクティブが杉本流かと。そして、ジェームス・タレルのような。

美しさとともに安心感を感じます。

隧道の真ん中には、井戸。

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光の井戸。上は、切り取られた空。

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冬至の日の出が70メートルの隧道を真っ直ぐに入り込み

この岩に当たるそうです!

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井戸の脇に鏡のある小部屋。
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隧道の上も美しい。思わず、止め石を見落として先までぐんぐん歩いて行った見学者がいました。
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たくさん写真を取りすぎました!(笑)

まだまだたくさんあるのですが、この辺にしておきます。

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某日、

病院の待合室にあった雑誌ディスカバリー・ジャパンのインタビューを書き写してきました。

「20世紀から21世紀にかけて


特に戦後の産業復興は人類の歴史を振り返っても


特異な現象だと言ってよいでしょう。


経済成長の中でより安定した豊かな生活を求める一方で


自然から多くを収奪してきたことに気づかなくなってしまった。


こうした人間の行動&思考のパターンが現代の闇を作り出している」


「人も建物も密集した都会に住んでいると、


広々とした場所で目的を持たず過ごす機会はほとんどないでしょう。


自分が好きな場所に腰を下ろし、空にトンビが舞うのを眺め、……、


環境の微細な変化を全身で感じ取る事で、


人が人でありこの世に存在している理由がおのずと見えてくるはずです」


ところで、

ウィキで杉本氏を検索すると、冒頭にこう書かれています。

「作品は厳密なコンセプトと哲学に基づき作られている。」

確かにそう、厳密なのです。

そして、意外と父性よりも母性を感じたりしました。

あぁ、それはきっと、この海のせいですね!

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今回は、見たものが壮大すぎて

何かうまくまとまりませんでした。

それでは皆さま、メリークリスマス!








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