具合のいいわた入り
べっとり暑い夏、お盆です。季節柄、もっとも要らないもののひとつです。わた入りの話しです。今、ちょうどそれが出来つつあって、この季節にはたいへん不具合な話題ではありますが、ちょっとだけご報告を。
皆さんはわた入りって着ますか? あ、もちろん、その季節にということで。私はわた入りって聞くとコタツで上半身をカバーするもの、というイメージがあってあまりおしゃれじゃないよなー、と思っていたクチ。でもある年、ニューヨークのチャイナタウンへ行って、夜店みたいなところで安く買ったものがすごく便利で……。以来お世話になりっぱなしなんです。ダウンジャケットほどの機能服じゃないし、保温力も街着程度。でも、ちょっと寒い夜に着るとか、うんと寒い時にはコートの中に着る。ということで出番が多いのです。(着たまま寝てしまうことも……。やはりコタツの友か?)
その後も“わた”には敏感で。伝統的なわた入りは真綿(シルクのわた)でつくられていることも知りました。台北のチーパオの仕立て屋にて。おじさんひとりが店の奥で裁断からミシンまで全部やっているような小さな店だったけれど、お客さんのサイズを測るだけで(パターンを使わないで)布に直接粉チョークで線を引いて裁断する、というような。本当に昔ながらの仕事をしているところでした。ペタッとした三角形の真綿を両手でポンポンと伸ばしていく。まるで、ちいさな固まりからナンを大きく伸ばしていくみたいな職人技。みるみるうちに、本当に大きく膨らむ。……このお店のおじさんは、店主に内緒でチーパオのはぎれをこっそりくれたり、ごはんを一緒に食べさせてくれたり。忘れられません。私は何回もそこへ通いつめました。
さてさて。かつてはチーパオ仕立ての弟子入りを経て、マニスでも以前は真綿のチャイナをつくっていました。その後は真綿が次第に手に入らなくなったこともあって、いわゆるキルティング向けのわたを使っています。今年のは、水洗いもできる高機能わた。真綿のようにやわらかくて、ほんの薄いものでもかなり暖かい。たまたま、カラフルなインドのブロックプリントが手に入ったので何をつくろうかなー? そうだ、わた入りだ! ということで。「カラフル=わた入り」という図式は個人的なもので、最初に買ったチャイナタウンのがショッキングピンクだったから。暗めは普通。きれいな色がうれしいのです。仕立てのノウハウは今も少しだけチーパオ流。
マニスのはリバーシブル仕立て。ひっくり返してまたひっくり返して、またまたひっくり返して着ていただけたら嬉しいです。
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